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help リーダーに追加 RSS 労働ビッグバンを嗤うC〜労働力はモノという誤った発想

<<   作成日時 : 2007/01/18 23:45   >>

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いわゆる「労働ビッグバン」の根本的な誤りは、労働力をモノと同じように考えていることです。さながらモノを安く調達できるように労働力を安く調達することを意図した改革は、「財界のための改革」であり、今の労働市場の矛盾を解決する「労働者の改革」ではありません。そこで今日は、「労働ビッグバン」が抱える根本的な発想の誤りを考察してみたいと思います。

1)「労働ビッグバン」は財界のためにある
いわゆる「労働ビッグバン」では、当面の課題として、以下の3つを掲げています。
@.労働契約法制の整備
A.労働時間法制の見直し
B.労働派遣をめぐる規制の見直し
出所:経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申 ―さらなる飛躍を目指して― (抄)」 

経済財政諮問会議で出された答申では、これらの課題の解決は急務であると主張しています。しかし、この主張は噴飯もの以外の何物でもなく、労働市場における矛盾を解決できないどころか、逆に不均衡を拡大させる懸念の方が大きいと断じざるを得ません。
まず、「労働契約法制の整備」については、その必要性は認めるものの、彼らの主張する解雇の金銭的解決制度の導入は、合理的な理由のない「不当解雇」を解禁するおそれがあります。
次に、「労働時間法制の見直し」の柱となっているホワイトカラー・エグゼンプションは、今の長時間労働という矛盾を解決するどころか、逆に際限ない長時間労働と賃金低下をもたらす可能性の方が高いでしょう。
最後に、「労働派遣をめぐる規制の見直し」では、「事前面接の解禁」「派遣労働者に対する雇用契約申し込み義務の撤廃」の2本柱となっていますが、いずれも現状の派遣労働者へ刃を向ける内容です。「事前面接の解禁」は、現状でも横行している「若い女性だけが好かれる」という不条理にお墨付きを与えることになり、「雇用契約申し込み義務の撤廃」は、派遣社員を非正規に強力に固定するものです。
さらに一部報道によれば、「答申」の内容には盛り込まれなかったものの、労働基本権の制限や偽装請負の合法化なども検討されていたようです。
これらの内容は、一部企業にとっては総人件費削減につながるものが多いですが、現場で働く者には何のメリットもありません。
結局、「労働ビッグバン」は財界のための改革であり、働く生活者には「改悪」に過ぎない内容なのです。

2)一貫している「労働力=モノ」という発想
とても労働市場の現状を分かっているとは思えない「労働ビッグバン」において一貫しているのは、「労働力はモノ」であるという経済学的な思想です。
おそらく、「グローバル化に対応するためにはコスト切り下げしかない。だから労働規制をなくし、総人件費を減らすことができる改革を」ということなのでしょう。
もともと、古典派経済学においては、労働市場は需要と供給によって均衡します。例えば、労働者派遣において競争が激しくなり、派遣料金や派遣労働者の賃金が下落したのは、こうした理屈によって説明がつきます。こうした労働市場の発想は、まるでモノを取引するときと同じ方法です。
労働市場における規制が撤廃され、モノが取引されるかのような形態になると、かつての派遣労働者の賃金にも見られたような値崩れが起こります。それが派遣や請負で見られるような劣悪な雇用を生み、350万人にものぼると言われているワーキング・プアの問題を生じさせているのです。
今の労働市場で起こっているこうした矛盾に心を痛めることもなく、こうした矛盾を固定化させかねない「改革」を打ち出すのは、とても人間の為せる業とは思えません。

3)生産性を高めることは総人件費を削減するだけにあらず
労働市場改革のもともとの方向性は、企業の生産性を高めることにあります。
ところがこの「労働ビッグバン」における議論は、総人件費を削減することで企業の生産性を高めるという視点しかありません。
労働者は、モノではなく「生身の人間」ですから、あからさまな総人件費削減はかえって労働意欲を削ぎます。長期的には、それが生産性の更なる低下をもたらし、日本の産業を崩壊させることにつながりかねません。
むしろ、人件費が高い日本で生産性を高めるにはどうするか、という視点で知恵を絞る方が、長期的に見て競争力は間違いなく上がるでしょう。
その一つとして、いかに社員のモチベーションを高め、時間当たり生産性を高めるかという視点が必要です。今年の経済財政白書における、「従業員を重視する企業では、営業面・技術面の優位を生かして高い収益性を実現しているという可能性が考えられる(p186)」という記述は大変興味深いものです。従業員を大切にすることや、会社と従業員との強固な信頼関係の構築ことが、長期的に見て収益につながることを示唆するものです。
そうしたことを考えると、現状の労働市場において解決するべき喫緊の課題は、「均等待遇の実現」でしょう。平成18年版労働経済白書によると、女性の非正社員の3〜5割が「正社員と賃金格差があり納得できない」と感じているという結果が出ています。今の日本経済は、低賃金ながら健気に働く彼女たちによって支えられている部分が少なくありません。均等待遇を実現させることで、正社員並みに働く非正社員が報われれば、彼らの生産性は間違いなく上がります。確かに均等待遇は一時的なコストアップにつながる点を否定しませんが、生産性が向上すれば一時的なコストは十分回収可能な筈です。

(参考文献)
鹿嶋敬『雇用破壊 非正社員という生き方』岩波書店、2005年。
門倉貴史『ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る』宝島社新書、2006年。
中野麻美『労働ダンピング』岩波新書、2006年。
週刊東洋経済2007年1月13日号「特集/雇用破壊」東洋経済新報社。

(参考資料)
厚生労働省「平成18年版労働経済白書」
内閣府「平成18年版経済財政白書」

(参考ホームページ)
経済財政諮問会議ホームページ(http://www.keizai-shimon.go.jp/

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