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help リーダーに追加 RSS 労働ビッグバンを嗤う@〜財界にだけ都合のよい方向性

<<   作成日時 : 2007/01/12 10:58   >>

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次の国会では、労働市場の規制改革が重要な課題になりそうです。しかし、「労働ビッグバン」と名付けられたその内容は噴飯ものであり、「労働者の権利の放棄」を声高に主張する財界の主張しか反映されていません。そこで今日は、「労働ビッグバン」の概要を取り上げ、その問題点をいくつか指摘したいと思います。

1)労働ビッグバンは財界の短期的視点しか反映されてない
いわゆる「労働ビッグバン」とは、政府(特に経済財政諮問会議)が目指している労働市場における規制改革の総称です。新しい時代の望ましい労働市場のあり方を考えるものらしいのですが、どのような方向に規制改革をしようとしているのでしょうか?
内閣府内にある経済財政諮問会議において、昨年12月25日にまとめた答申「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申」によると、以下の5項目の実現を求めています。
@.労働契約法制の整備
A.労働時間法制の見直し
B.紹介予定派遣以外の労働者派遣における事前面接の解禁
C.派遣労働者に対する雇用契約申し込み義務の見直し
D.雇用の流動化等に対応した環境整備
これらの項目には、いずれも現在の労働市場が抱える懸案事項に関する問題が多く含まれています。答申は問題意識として、「高齢者・女性・若者が意欲を持って能力を発揮できる環境整備が求められており…(中略)…既成の概念や旧来の仕組みを見直す時に来ている(答申より部分抜粋)」というご高説を掲げています。
しかし、内容を詳細を調べると、経営者側が求める「賃金引下げ、残業手当など諸手当のカット、労働者の権利の放棄」が色濃く反映された内容であることが分かります。つまり、この「労働ビックバン」は短期的な利益のみを追求する財界の視点からしか描かれておらず、現在の労働市場が抱える様々な矛盾を解決できるものとはとても思えないのです。

2)解雇制限の緩和は慎重であるべき
労働ビッグバンの中核となるもののひとつに、「労働契約法」の制定があります。
従来の労働法制では、労働基準法以外に個別的労働契約のルールを規定した法規がなく、時には裁判所の判例によってルールが形作られることもありました。例えば、客観的に合理的でない解雇は解雇権の濫用に当たるという「解雇権濫用法理」は、今でこそ労働基準法に盛り込まれています。ただ、法律で成文化されたのは2003年のことで、長らく判例によって確立された「ルール」だったのです。
こうした状況を考えると、雇用から解雇に至るまでの雇用ルールを規定した「労働契約法」が必要であるという主張は、ある一定の説得力を持ちます。
しかし、問題なのは中身です。答申では「解雇紛争の(中略)金銭的解決についても検討すべきである(答申より部分抜粋)」とし、解雇の金銭的解決制度の導入の必要性を強調しています。解雇制限が厳しいと衰退産業からの人材退出を妨げる一面があることは否定しませんが、これは一歩間違うと、合理的な理由がなくても「カネさえ払えば解雇できる」という不当解雇につながりかねない危険をはらんでいます。
(10月24日の記事http://tori-s.at.webry.info/200610/article_17.htmlもご覧ください)。
確かに、労働契約法制の制定の必要性は認めます。ですが、不当解雇から守られない危険性がある内容が柱になっているようでは、「労働者の権利の放棄」を主張する財界寄りの内容と批判されても仕方ないのではないでしょうか。

3)派遣労働者を固定化し、安定した低賃金労働者の確保する狙いなのでは?
先日コキ下ろしたホワイトカラー・エグゼンプション導入を柱とする「A労働時間法制の見直し」以上に、労働ビッグバンの内容で問題だと思うのが派遣労働者の扱いについてです。
現在の労働者派遣法では、派遣労働者の事前面接は原則として禁止されています。これは、派遣労働者の就労機会を狭めることのないようにという配慮から設けられた、派遣労働者を保護するための規定でもあるのです。
それに対し、今回の答申では「派遣先におけるミスマッチ防止」というもっともらしい観点から、事前面接の解禁の必要性を訴えています。
確かに、事前面接が行われないとミスマッチ発生の要因になりうることは理解できます。
しかし、現在でも違法な筈の事前面接が半ば公然と行われ、「派遣先が使いやすい人」が派遣受け入れの条件になっているのが現状です。極端な話、若くて容姿の良い女性は仕事にありつけるが、30歳半ばでお払い箱という「35歳定年」がまかり通っている実情があります。
このような状況で事前面接を解禁すると、若い女性だけが好かれるという現状の矛盾が固定化されることにもなるのです。
さらに、答申では「派遣労働者に対する雇用契約申し込み義務の見直し」を求めています。
現行制度では、同一の業務に一定期間(原則3年)以上勤めた派遣労働者に対し、正社員や契約社員など直接雇用を申し込まなければいけないことが義務付けられています。
答申では、その「派遣労働者への直接雇用申し込み義務」を撤廃し、派遣期間を青天井にすることを求めています。
これは派遣労働者の直接雇用機会を奪うだけではなく、派遣労働者を低賃金の非正規雇用へ固定化することを意味します。派遣労働者の雇用の不安定化の問題が解決されるどころか、派遣社員という低賃金労働者を安定的に確保したいという意図が見え見えです。
結局のところ、派遣労働の規制見直しの主張は、「もっと都合よく派遣社員を使わせろ」と言っているようにしか見えません。

(参考文献)
鹿嶋敬『雇用破壊 非正社員という生き方』岩波書店。2005年。
中野麻美『労働ダンピング―雇用の多様化の果てに』岩波新書、2006年。

(参考ホームページ)
内閣府 経済財政諮問会議(http://www.keizai-shimon.go.jp/

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